ドローンを空港周辺で飛ばすことはできないかな?
空港の周りではドローンなど無人航空機の飛行が制限されていると聞くけど、どのような制限なのか知りたい!
そう思っても、なかなかまとまった情報が無いし、ググって見つけた個人ブログの記事は情報が古いみたい…。
ドローンを始めた人にありがちな悩みですよね。かくいう私も、同じような悩みを持っていました…。
空港周辺では、ドローンの飛行にどのような制限があるの?
空港の周辺として制限を受ける場所の調べ方は?
ドローンを空港周辺で飛ばすにはどうすればよいの?
この記事では、空港周辺の空域で、ドローン等無人航空機に対してどのような制限が設けられているのかについて分かりやすく解説。
2020年7月22日より無人航空機等の飛行が禁止された空港の情報から、飛行予定地が空港周辺の空域として制限を受けている場所で飛ばすために必要な許可申請の方法までカバーしています。
目次
空港周辺でのドローン飛行に関する制限とは?
夕日をバックに空港から飛び立つ飛行機、真っ青な空に向かって上昇してゆく航空機…。
空港周辺は、SNS映えしそうな撮影スポットの宝庫。
せっかくならカメラ付きドローンで、普通の視点では撮れない、より迫力ある写真を撮ってみたいなぁ。
そんな野望を抱いたことがあるのは、私だけではないですよね?
でも、航空機の安全な運航のため、当然、空港周辺ではドローンの飛行が制限されています。
そして、その制限されている空域でドローンが目撃されたことで、成田空港の滑走路が一時的に閉鎖され、飛行機に遅れを生じさせてしまったという事件もありました。
ドローン目撃、滑走路閉鎖 成田空港、1便遅れる(千葉日報)
空港周辺はの空域は、航空法と小型無人機等飛行禁止法の2つの法律によって規制されています。
これらの法律に違反してしまうと、最悪の場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に。
それだけでなく、民事訴訟により高額な損害賠償請求を受ける可能性もあるのです。
フォトジェニックな写真を追い求めた結果として、法律違反による処罰を受けるようなうっかりは禁物。
空港周辺のどこまでがどのような制限を受けているのかなど、しっかりと知識を身につけて、安全にドローン飛行を楽しみましょう。
2019年の改正により拡大した空港周辺でのドローン飛行の制限(航空法)
航空安全を確保するため、航空法により、空港周辺でのドローン飛行は禁止されています。
そして、この航空法による規制を受けるのは、2020年現在、200g以上のドローンのみ。
200g未満のドローンについては、航空法による規制を受ける無人航空機に含まれません。
(飛行の禁止空域)
航空法 第132条 第1項 第1号
第百三十二条 何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。
一 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域
(飛行の禁止空域)
航空法施行規則 第236条 第1~3号
第二百三十六条 法第百三十二条第一項第一号の国土交通省令で定める空域は、次のとおりとする。
一 航空機の離陸及び着陸が頻繁に実施される空港等で安全かつ円滑な航空交通の確保を図る必要があるものとして国土交通大臣が告示で定めるものの周辺の空域であつて、当該空港等及びその上空の空域における航空交通の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域
二 前号に掲げる空港等以外の空港等の周辺の空域であつて、進入表面、転移表面若しくは水平表面又は法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域
三 法第三十八条第一項の規定が適用されない飛行場(自衛隊の設置する飛行場を除く。以下同じ。)の周辺の空域であつて、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域
禁止されているのは、航空法にもとづく制限表面(進入表面、転移表面、水平表面、延長進入表面、円錐表面、外側水平表面)と呼ばれる高さ以上の飛行。
この制限表面というのは、簡単に言うと、対象となる空港を中心に、すり鉢状に設定されている高さの制限のこと。
空港によって設定されている高さや範囲が異なりますので、一律にこの範囲といえません。
そのため、近くに空港がある場合は事前の調査が必要です。
ただし、禁止されていますが、絶対にダメという訳ではなく、事前に国土交通大臣の許可を得ることで飛行可能となります。
200g未満のトイドローンにも適用される小型無人機等飛行禁止法
飛ばしたいのは200g未満のドローンだから、空港周辺でも無制限に飛行可能で良かった!
残念ながら、そう簡単に話は済みません。
2020年に改正された「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(小型無人機等飛行禁止法)」により、以下の8つの空港については、空港の敷地・区域やその周辺おおむね300mの地域での小型無人機等の飛行が禁止されました。
- 新千歳空港
- 成田国際空港
- 東京国際空港
- 中部国際空港
- 関西国際空港
- 大阪国際空港
- 福岡空港
- 那覇空港
この「小型無人機等飛行禁止法」は、航空法の規制を受けない200g未満のドローンについても適用されるので注意が必要です。
ドローン飛行予定地に空港周辺の空域としての制限があるかを調べる方法
ドローンの空港周辺での飛行に関係するのは、「航空法」と「小型無人機等飛行禁止法」の2つ。
それぞれの飛行禁止エリアの調べ方は次の通りです。
航空法により制限を受ける空域を調べる方法
空港周辺の空域としてドローン飛行が制限されているのはどこか?
それを調べる一番良い方法は、地理院地図「空港等の周辺の空域(航空局)」(国土地理院)をチェックすること。
東京近郊の空港周辺の空域と指定されている範囲は、地図中で着色されている範囲。
皆さんもよくご存じの成田国際空港周辺を拡大してみると、図のように緑と紫で色分けされています。
この緑の範囲は一定の高さ以上でのドローンの飛行が制限される空域。
そのため、高度制限を超えない高さでのドローン飛行であれば、許可が不要となります。
一方、紫色の部分は一切の飛行が禁止されている空域。
高度にかかわらずドローン飛行が制限されています。
紫色の範囲は、すべての空港等に設定されているわけではなく、現在、2020年に指定された下記の空港のみに適用されている制限です。
- 新千歳空港
- 成田国際空港
- 東京国際空港
- 中部国際空港
- 関西国際空港
- 大阪国際空港
- 福岡空港
- 那覇空港
この8つの空港周辺でのドローン飛行を検討している場合は、次の項目で解説する「小型無人機等飛行禁止法」による制限も受けますので、さらに詳しい調査が必要です。
便利な地理院地図ですが、表示に若干の誤差が生じている可能性もあります。
また、緑色のエリアの制限高度が何メートルなのかについては、各空港等の管理者に確認することが必要です。
そのため、ドローン飛行予定地が空港周辺の空域に近いと判明したら、その空港等の管理者に確認することがおすすめ。
管理者は、「空港等設置管理者及び空域を管轄する機関の連絡先について」(国土交通省)に記載されています。
例えば、成田国際空港なら、上記リンク先のページ中ほどにある
「進入表面等の設定状況(詳細図)及び空港等の周辺空域を管轄する機関の連絡先」から関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)を選んでクリック。
リンク先リストの「千葉県」に記載されている「成田国際空港」を確認すると、「成田国際空港株式会社 空港運用部門 オペレーションセンター」と書かれています。
こちらが問い合わせ先となります。
空港によって異なりますが、大きな空港になると、ホームページ上に照会システムを設けているケースも。
成田空港にも、「成田空港高さ制限回答システム」というオンラインで制限高度をチェックできいるシステムがあります。
空港等の管理者に確認しなければならないことは2つ。
- ドローン飛行予定地が空港周辺の空域として制限を受けるのか?
- 空港周辺の空域となっている場合、制限高度は何mなのか?
チェックした結果、ドローン飛行予定地が空港周辺の空域として制限を受けることが判明。
でも、制限高度より低空で飛行させるという場合には、航空法に基づく許可申請は不要。
制限高度以上に飛ばしたい場合は、事前に必要な許可申請等を行いましょう。
※ただし、地上等から150m以上の高さという場合には、「地表または水面から150m以上の高さの空域」として別の制限が。
空港周辺の空域としての許可申請は不要ですが、別途、国土交通大臣への飛行許可申請等が必要となってしまいます。
小型無人機等飛行禁止法による制限を調べる方法
200g未満のトイドローンでも飛行が制限される「小型無人機等禁止法」により制限を受ける空港は、2020年現在、新千歳空港・成田国際空港・東京国際空港・中部国際空港・関西国際空港・大阪国際空港・福岡空港・那覇空港の8つ。
これらの空港の敷地・区域やその周辺概ね300mの地域が飛行禁止エリアとして指定されています。
具体的なエリアは、下記リンク先の区域図及び周辺地域図のとおり。
「小型無人機等飛行禁止法に基づき小型無人機等の飛行が禁止される空港の指定について」(国土交通省)
飛行予定エリアが、航空法と小型無人機等飛行禁止法のどちらの制限も受けないことが判明した場合は、安全管理をしっかりと行いフライトを楽しみましょう。
もし、制限を受けるエリア内と判明しても大丈夫。
必要な許可申請による承認や事前の通報等を行うことで、禁止エリア内でもドローンの飛行が可能になります。
空港周辺でのドローン飛行に必要な許可申請
空港周辺の空域で制限高度以上にドローンを飛ばしたい場合は、
- 該当する空港等の管理者との調整を行い、同意を得る
- 国土交通大臣に許可申請を行う
- 飛行を開始する48時間前までに都道府県公安委員会等に通報する(小型無人機等飛行禁止法の禁止エリア内の場合のみ)
という手順で進める必要があります。
空港等管理者との調整
調整が必要な管理者等は、「空港等設置管理者及び空域を管轄する機関の連絡先について」(国土交通省)でチェック。
誰が・いつ・どこで・何を・何のために飛ばすのかを伝えたうえで、どのような条件なら飛行に同意を得られるのか調整を行います。
その結果として、同意を証する書面を入手。
国土交通大臣への許可申請
手続き方法は3つ。
オンライン申請、郵送及び持参のどの方法でもOKですが、ドローン情報基盤システム DIPS(国土交通省)によるオンライン申請がおすすめ。
初めての申請で不安でも、自動的に申請内容がチェックされるので、あまり迷わずに書類を作成できます。
申請は少なくとも飛行予定日の10開庁日前までに行うこと。
でも、書類不備の場合はさらに審査に時間がかかるため、飛行予定日が決まったら早めの申請が吉。
都道府県公安委員会等への通報
飛行を開始する48時間前までに通報する必要があるのは、都道府県公安委員会等と空港等管理者の2か所。
都道府県公安委員会等
都道府県公安委員会に直接連絡するのではなく、その空港周辺の地域を管轄している警察署を経由して通報することとなっています。
その管轄している警察署を調べる方法は以下の通り。
- 小型無人機等飛行禁止法に基づく対象施設の指定関係 対象空港(警察庁)から管轄警察署を調べ、リンク先の各都道府県警のサイトに飛ぶ
- 空港周辺地域を管轄する警察署を確認する
- 別記様式第1号を作成し、管轄する警察署を通じて、都道府県公安委員会等に通報する(2つ以上の警察署が表示されている場合は、どれか1つを通じて通報すればOK)
※エリアをまたぐため、羽田空港については警察庁と神奈川県警、大阪国際空港については大阪府警察と兵庫県警察への通報が必要。
空港等管理者
「空港等設置管理者及び空域を管轄する機関の連絡先について」(国土交通省)でチェックした空港管理者に、小型無人機等の飛行に関する対象空港管理者への通報書(通常使用するのは、リンク先の「様式第3号」)によって通報する。
空港周辺の空域でのドローン飛行に関する許可申請の今後
この記事を作成している2020年現在、航空法による制限を受けるドローンは、バッテリー込みで200g以上の機体に限られています。
しかし、2020年12月3日の「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第15回)」で、2022年度に「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(レベル4)実現を目標として、無人航空機の範囲を200g以上から100g以上に広げる方向性が示されました。
「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」(国土交通省航空局)
ドローンの物流等への活用に向けて、今後どのように法改正等が行われるか目を離せません。